【医師監修】脂肪肝の原因や症状〜改善方法もわかりやすく解説〜
当記事は、内科認定医・糖尿病専門医 古賀 萌奈美先生にご監修いただきました。
執筆はライター 前間弘美(管理栄養士)が担当しました。
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脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰に溜まった状態をいいます。
もともと脂肪肝は軽い病気だと考えられていましたが、肝炎や肝硬変につながる可能性があるため積極的に改善するべきです。
そこで今回は、脂肪肝の原因や症状についてわかりやすくお伝えいたします。脂肪肝の改善方法もご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
脂肪肝の原因はなに?
脂肪肝の原因は、
・代謝異常
・遺伝
が挙げられます。
そのほかにも睡眠時無呼吸症候群・乾癬・多嚢胞卵巣症候群・甲状腺機能低下症・下垂体機能低下症などの疾患・手術後の中心静脈栄養・薬剤なども要因となります。
参考記事:【医師監修】睡眠時無呼吸症候群の症状〜原因や治し方をポイント解説〜
お酒の飲みすぎによる脂肪肝
お酒の飲みすぎにより、脂質など他の代謝に影響を与えることや、アルコールとその代謝産物による肝毒性など様々な要因でアルコール性脂肪肝につながります。
なお、アルコール性脂肪肝は長期(通常5年以上)にわたる過剰な飲酒が主な原因と考えられる場合に診断されます。ただし、女性や特定の遺伝子型を持つ人(ALDH2* 2:日本人の約40%がこれを有しているとされています)では少量の飲酒でも発症要因となります。
お酒を飲まなくても脂肪肝になるの?
お酒を飲まない方や少しだけ飲む方でも、脂肪肝になります。
少し前まで、脂肪肝はお酒を飲む人の病気だ、と考えられていました。しかし、最近では肥満や遺伝が原因となって脂肪肝が引き起こされることがわかってきたのです。それが、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)です。
現在、日本には2000万人前後のNAFLD潜在患者がいる、と推定されています。
また、肥満がなくとも「2型糖尿病」もしくは 「2種類以上の代謝異常(血圧・高TG血症・低HDL-C血症・耐糖能異常・高インスリン抵抗性)」などが脂肪肝の要因となることも明らかになってきています。
代謝異常がかかわる脂肪肝
遺伝要因に加えて、生活習慣の乱れが肥満や2型糖尿病、脂質異常症、高血圧を引き起こした場合、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)になる可能性があります。
生活習慣とは、食事や運動習慣のことです。
そもそも私たちの体は、消費カロリーよりも摂取カロリーが多いと余ったカロリーを脂肪として貯め込みます。
食事や間食の摂りすぎは摂取カロリーが増え、運動不足は消費カロリーが減少します。そして余ったカロリーを脂肪として貯め込んだ肝臓は、脂肪肝になるのです。
参考記事:【医師監修】2型糖尿病とは〜原因・症状や治療についてわかりやすく解説〜
参考記事:【医師監修】高血圧とはどんな状態?~症状や生活習慣での改善ポイントを解説~
遺伝による脂肪肝
遺伝的な要因がある場合、お酒の飲みすぎや肥満の程度が低くても非アルコール性脂肪肝(NAFLD)となりやすくなります。
PNPLA3遺伝子多型は、肝脂肪化や肝線維化進行に強い関連を持っています。また倹約遺伝子として有名な変異型Trp64Argの保有率が日本人では約3割と高頻度です。このTrp64Arg変異を持つと基礎代謝量が少なくて済むため、飢餓に強い一方で、肥満となると減量が困難となりNASHに2.4倍罹患しやすくなると推計されています。
その他、糖・脂質代謝関連分子であるMTP活性低下を示す遺伝子多型の頻度が高いことが、欧米人に比して日本人では肝に中性脂肪が蓄積しやすい一因と考えられており、日本人は肥満ではないNAFLDの方が多いといわれています。
症状について
脂肪肝には、ほとんど症状がありません。
しかし脂肪肝が進行し肝炎になると、体のだるさや疲れやすさを感じることも。
その他、肝硬変まで進行してくると全身の痒みや黄疸、乳房が大きくなったりしこりがある(男性のみ)といった症状が出ることがあるのです。
進行するとどうなるのか
脂肪肝が進行すると肝炎になり、肝硬変や肝臓がんになる可能性が高くなります。
また非アルコール性脂肪肝では大腸癌、乳癌の発症率が上昇することも報告されています。
脂肪肝の診断
まずは、アルコール性脂肪肝かどうか診断を行います。アルコール性の可能性が除外された場合、非アルコール性脂肪肝の診断を行っていきます。
アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝で、診断方法が異なります。
アルコール性脂肪肝の診断
アルコール性脂肪肝は飲酒歴や血液検査、画像検査によって診断されます。
飲酒歴は、本人や家族など第三者からの申告や聞き取りが行われます。純エタノールに換算して1日60g以上の飲酒で、過剰な飲酒と判断されますが、女性やALDH2活性欠損者では、1日40g程度の飲酒でも過剰となります。
【アルコールの目安】
お酒の種類 | 量 | 準エタノール換算量 |
ビール | 500ml | 20g |
日本酒 | 180ml(1合) | 22g |
焼酎 | 180ml(1合) | 50g |
ワイン | 120ml(1杯) | 12g |
ウイスキー | ダブル(60ml) | 20g |
ブランデー | ダブル(60ml) | 20g |
また血液検査では、AST/ALT比の上昇を伴うAST・ALTの上昇やγ−GTP上昇、高脂血症、コリンエステラーゼ上昇がみられます。
禁酒によりこれらが明らかに改善することも重要です。
ASTとは肝臓や筋細胞などに含まれる酵素のことで、ALTは肝臓のみに多く含まれる酵素のことを言います。肝細胞が傷つくとこれらの酵素が血液中に出てくるため数値が上昇します。
γ-GPTはたんぱく質を分解する酵素で、アルコールが原因で上がりやすい数値です。
非アルコール性脂肪肝の診断
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)を診断するには画像検査(腹部超音波検査(腹部エコー検査)、CT検査、MRI検査)を行う必要があります。というのも、ASTやALTが低くてもNAFLDの可能性はあるからです。
また飲酒が原因でないことを示すために、飲酒量が純エタノールに換算して1日あたり男性で30g以下、女性で20g以下にとどまっている必要があります。
肥満や高血圧、脂質異常症(悪玉コレステロール値・中性脂肪値が高い場合)、糖尿病、高尿酸血症などをお持ちの方や、NAFLDリスクの高い方は腹部エコー検査等の画像検査を受けることをおすすめいたします。
糖尿病との関係
非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は耐糖能異常(※)や2型糖尿病と深い関係があります。
(※)血糖値の異常
海外の研究ですが、空腹時血糖値が高めの方の半数以上はNAFLDだったという報告や、NAFLDの診断を受けた方の47%は2型糖尿病だったという報告があります。
また血糖値を上げるブドウ糖を含む糖質はエネルギー源として大切な栄養素ですが、余ると中性脂肪としてたくわえられます。
つまり、糖尿病と脂肪肝はお互いに影響を与え合う関係なのです。
参考記事:【医師監修】糖尿病とはどんな病気?症状・原因・治療などをわかりやすく解説
脂肪肝を治すための治療
脂肪肝の治療は、原因によって異なります。
アルコールが原因の場合は、断酒が必須です。
肥満が原因の場合は、生活習慣の改善が基本です。食事や運動で減量を行い、肝臓に付いている脂肪を落としていきます。5%の体重減少で日常生活の質が改善し、7%以上の減量で肝組織像(肝脂肪化や炎症細胞浸潤、風船用腫大)を改善することが分かっています。
食事でのポイント
肥満を解消するには過剰な脂質や糖質を控え、適度なカロリーの中でバランスのよい食事を摂ることを意識しましょう。
過剰な脂質を控える工夫としては、
・脂身の少ない肉を選ぶ
・油を使わない調理法にする
が挙げられます。糖質の場合は、
・果物を食べすぎない
・野菜や海藻を十分に食べる
といった点を工夫したいです。
果物はビタミンやミネラルが摂れる点はうれしいのですが、食べすぎると糖質の摂りすぎにつながります。一方で野菜や海藻はビタミンやミネラル、食物繊維が豊富でカロリーの低いものが多いです。
食物繊維は満腹感を得られるほか、糖質の吸収を緩やかにしてくれるので積極的に摂りたい栄養素です。
肝硬変へ進行している場合には、食事療法の内容が異なります。主治医に確認をしてください。
参考記事:【管理栄養士監修】脂肪肝の人が食べてはいけないものとは?~オススメ食品もご紹介~
1日5分でも運動しよう
運動は1週間に150分以上が望ましいとされています。とはいえ運動習慣のない方がいきなりたくさん運動するのは、ハードルが高く継続が難しいと考えられます。
まずは1日5分でも10分でもよいので、日常生活に+αで運動できるとよいですね。
運動の内容は
・筋トレ
・体操
など、ご自身の取り入れやすいものを試してみましょう。
ただし急性肝炎の状態や肝硬変では運動療法は勧められません。
参考記事:【糖尿病の方必見】筋トレは血糖値の改善に有効〜オススメの筋トレを紹介〜
まとめ
以上、脂肪肝とは肝臓の細胞に中性脂肪が溜まった状態で、アルコールと肥満が主な原因であるとわかりました。
脂肪肝には症状がほとんどないため放っておきがちですが、肝硬変や肝がんに進行するケースもあります。決して楽観的に考えてはいけません。
そして脂肪肝の改善ポイントはアルコールが原因の方は禁酒、肥満が原因の方は運動や食事による減量、です。
それでは当記事を参考に脂肪肝に関する知識が深まり、生活習慣の見直しにつながると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは体重や食事・運動の記録がカンタンにできます。日々の食事管理でぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
・人間ドック健診における脂肪肝 -最近の話題- JA北海道厚生連 帯広厚生病院 健診センター長 新智文 人間ドック32:7-16,2017
・厚生労働省 e-ヘルスネット
・アルコール性肝障害の 病態研究・治療の最新の進歩 (日内会誌 109 : 3 号, 471-477)
・NAFLDの複雑な病因と病態 (日内会誌 105:15~24,2016)
・非アルコール性脂肪性肝疾患の疾患関連遺伝子 (日消誌 2013;110:1597―1601)
・NAFLD/NASH診療ガイドライン2020
・MSD株式会社 肝機能障害の方のためのやさしい食卓 女子栄養大学 栄養クリニック教授 蒲池桂子監修